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数字で見る日本酒の産業|蔵は50年で半分以下、輸出は10年で3倍

日本酒の話に「蔵が減っている」「輸出が伸びている」という説明はよく出てきます。どちらも国税庁が数字を公表しています。

この記事では、「酒のしおり」の免許場数・輸出動向と、「酒類製造業及び酒類卸売業の概況」の清酒製造業の調査から、数値をそのまま読みます。

この記事の結論

  • 清酒の製造免許場は昭和45年の3,533場から令和5年の1,525場へ(本書き)
  • 回答した1,233者のうち852者は、年100kL以下。1万kL超はわずか8者
  • 従業員は1者平均12人(中小企業)。個人事業者は4人
  • 「杜氏制」を採る蔵は少数派。中小企業1,067者のうち105者
  • 3分の1ほどの蔵が「桶売り」「桶買い」をしています
  • 清酒の輸出金額は2024年で435億円(前年比+5.8%)。2015年の約3倍

★清酒の製造免許場は50年で半分以下

国税庁「酒のしおり」の「酒類等製造免許場数の推移」から、清酒の数字を抜き出しました。

年度 清酒(本書き) 外書き
昭和45年3,53325
昭和55年2,94736
平成元年2,43856
平成10年2,22978
平成20年1,807137
平成30年1,580160
令和元年1,563157
令和5年1,525158
国税庁「酒のしおり(令和7年7月)」14 酒類等製造免許場数の推移より、清酒の欄を編集部が抜き出した(2026年8月12日確認)。単位は場。年度は原典の掲載どおり ※スマートフォンでは横にスクロールできます

「本書き」と「外書き」の違いは、原典の注に説明があります。

一の製造場で複数の酒類の製造免許を有しているものについて、主たる酒類を本書きとし、その他は外書きとして掲げた。

国税庁「酒のしおり(令和7年7月)」14の注5(2026年8月12日確認)

つまり本書きは「清酒が主たる酒類の製造場」、外書きは「清酒の免許は持つが主たる酒類は別の製造場」です。令和5年度は1,525場+158場になります。

本書きだけを見ると、昭和45年から令和5年で2,008場減っています。これは元の数の約57%にあたります(原典の数値から編集部が計算しました)。

★1,233者のうち852者は年100kL以下

蔵の規模はどうなっているか。国税庁のアンケート調査に、課税移出数量の規模別の回答者数があります。

課税移出数量規模 回答者数 1者平均の売上高
10,000kL超812,811,755千円
5,000kL超 10,000kL以下22,666,849千円
1,000kL超 5,000kL以下302,489,053千円
500kL超 1,000kL以下39863,622千円
100kL超 500kL以下302304,161千円
100kL以下85259,585千円
合計1,233291,001千円
国税庁「酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和7年アンケート)」表28 課税移出数量規模別の清酒の原料米代(1者平均)より、回答者数と売上高を編集部が抜き出した(2026年8月12日確認)。この調査は有効回答のみを集計したもので、全ての清酒製造者の数ではない ※スマートフォンでは横にスクロールできます

100kL以下が852者、100kL超500kL以下が302者。この2つで1,154者になり、回答者全体の9割を超えます(原典の数値から編集部が計算しました)。

一方で10,000kL超は8者だけです。1者平均の売上高は128億円で、100kL以下の蔵(約6,000万円)の200倍を超えます。同じ「日本酒の蔵」でも、規模の幅がきわめて大きいということです。

従業員は1者平均12人

同じ調査に、企業区分別の従業員数があります。

企業区分 回答者数 従業員数
(1者平均)
うち製造部門 うち詰口部門 その他
大企業9112人212269
中小企業1,18812人444
個人事業者364人111
同 表25 清酒製造業の企業区分別の従業員数(1者平均)より(2026年8月12日確認)。原典の注は「従業員数の『その他』とは、営業部門や事務職等のことをいう。」 ※スマートフォンでは横にスクロールできます

中小企業の製造部門は1者平均4人。季節雇用を含む実際の人数はこの表からは分かりませんが、通年の体制としてはこの規模だということです。

★「杜氏制」を採る蔵は少数派になっている

同じ調査に、誰が製造の責任者かを尋ねた項目があります。

企業区分 回答者数 代表者親族 杜氏制 社員杜氏
大企業615
中小企業1,067452105510
個人事業者292036
同 表26 清酒製造業の企業区分別の製造責任者より(2026年8月12日確認)。「—」は原典の表記のまま ※スマートフォンでは横にスクロールできます

中小企業1,067者のうち、杜氏制は105者。もっとも多いのは社員杜氏の510者で、次が代表者親族の452者です。

杜氏制は、江戸時代に農閑期の農民が職人化して生まれた仕組みでした。その成り立ちは別記事で扱っています。この表は、その仕組みがいまどれだけ残っているかを示す数字です。

日本酒の歴史を公的資料で追う|杜氏制度の成り立ちから、級別制度が消えた平成元年まで

3分の1ほどの蔵が「桶売り」「桶買い」をしている

調査には、蔵どうしで酒をやりとりする取引の項目もあります。

取引 企業区分 回答者数 行っている製造者数 数量(全体合計)
桶売り
(未納税移出)
大企業956,039kL
中小企業1,18840734,835kL
桶買い
(未納税移入)
大企業969,538kL
中小企業1,18837918,010kL
同 表23・表24より、大企業と中小企業の行を編集部が抜き出した(2026年8月12日確認)。個人事業者の行は省略した(桶売り9者・桶買い14者) ※スマートフォンでは横にスクロールできます

中小企業1,188者のうち、桶売りが407者、桶買いが379者。どちらも3分の1ほどにあたります(原典の数値から編集部が計算しました)。

蔵が自分のところで造った酒だけを売っているとは限らないということが、この数字から分かります。ただしこの調査は取引の有無と数量を集計したもので、どの商品がどうだったかを示すものではありません。

★輸出は10年で約3倍

国内の数字とは逆の動きをしているのが輸出です。

2024年の清酒の輸出金額は435億円(対前年比+5.8%)。
各国における景気等の影響により、輸出単価は横ばいに推移したものの、2022年頃から続いていた在庫調整が解消されたこと等により、輸出金額は増加。

国税庁「酒のしおり(令和7年7月)」36 最近の清酒の輸出動向について(2026年8月12日確認)
清酒の輸出金額
2015年(H27)14,011百万円
2018年(H30)22,232百万円
2020年(R2)24,141百万円
2022年(R4)47,489百万円
2023年(R5)41,063百万円
2024年(R6)43,456百万円
同資料のグラフに表示されている数値を編集部が転記した(2026年8月12日確認)。出典は財務省貿易統計。2016・2017・2019・2021年は紙幅の都合で省略した(原典には掲載あり)。2024年の43,456百万円は、本文の「435億円」および「対前年比+5.8%」と一致することを確認した ※スマートフォンでは横にスクロールできます

2015年の14,011百万円から2024年の43,456百万円へ、約3.1倍です(原典の数値から編集部が計算しました)。ただし一本調子ではありません。2022年の47,489百万円が最も高く、2023年はそこから減っています。

輸出先も公表されています。

国・地域 2024年の輸出金額 対前年増減率
中華人民共和国11,671百万円▲6.2%
アメリカ合衆国11,442百万円+25.9%
香港5,117百万円▲15.1%
大韓民国3,743百万円+29.1%
台湾2,670百万円▲0.3%
シンガポール1,484百万円▲1.7%
カナダ1,041百万円+37.9%
オーストラリア782百万円+21.4%
英国637百万円+17.2%
フランス552百万円+13.0%
同資料「輸出金額上位10か国・地域」より転記(2026年8月12日確認)。出典は財務省貿易統計。「▲」は原典の表記のままで減少を表す ※スマートフォンでは横にスクロールできます

上位2つの中国とアメリカで、全体の半分を超えています(原典の数値から編集部が計算しました)。動きは対照的で、中国は▲6.2%、アメリカは+25.9%です。

国内は減り、輸出は増える

ここまでの数字を並べると、方向が分かれています。

指標 動き
製造免許場数(本書き)昭和45年 3,533場 → 令和5年 1,525場
清酒の製成数量平成25酒造年度 452,353kL → 令和5酒造年度 321,752kL(→ 詳細
輸出金額2015年 14,011百万円 → 2024年 43,456百万円
本文で引用した各資料の数値を編集部が並べた(2026年8月12日確認)。単位も期間の区切りも異なるため、直接比べられる数字ではない(製成数量は酒造年度、輸出は暦年、免許場数は年度) ※スマートフォンでは横にスクロールできます

なお輸出の43,456百万円は金額、製成数量の321,752kLは数量で、単位が違います。「輸出が増えたから国内の減少が埋まった」とは、この数字からは言えません。

制度の側では、令和2年4月の酒税法改正で「輸出用清酒製造免許」が新設されています(申請受付は令和3年4月から)。この改正は酒税制度の年表にも載っています。

数字を見るときの注意

読み違えやすいところ

  • 免許場数は「蔵の数」と完全には一致しません。1つの会社が複数の製造場を持つ場合があり、本書きと外書きの区別もあります
  • 規模や従業員の表はアンケートの有効回答分です。全ての清酒製造者を数えたものではありません
  • 輸出は暦年、製成数量は酒造年度、免許場数は年度と、区切りが違います。並べて比べるときは注意が必要です
  • 「桶売り・桶買いをしている」ことは、品質とは別の話です。当サイトから良し悪しについて述べることはしません

※2026年8月12日時点で確認した内容です。統計は毎年更新されます。最新の数値は国税庁のページでご確認ください。本記事は公表統計を読んだもので、個別の蔵や商品の評価ではありません。

よくある質問

日本酒の蔵はいくつありますか?
国税庁の統計では、令和5年度の清酒の製造免許場数が本書き1,525場、外書き158場です。ただし免許場数は製造場の数であり、会社の数とは一致しません。
日本酒の蔵は減っているのですか?
免許場数(本書き)は昭和45年度の3,533場から令和5年度の1,525場まで減っています。この間に2,008場、元の数の約57%が減った計算になります。
ほとんどの蔵は小さいのですか?
国税庁のアンケートに回答した1,233者のうち、852者が課税移出数量100kL以下でした。100kL超500kL以下の302者を合わせると9割を超えます。一方で10,000kL超は8者です。
いまも杜氏が造っているのですか?
製造責任者を尋ねた調査では、中小企業1,067者のうち杜氏制が105者、社員杜氏が510者、代表者親族が452者でした。杜氏制は少数派になっています。
日本酒はどこへ輸出されていますか?
2024年の輸出金額の上位は中華人民共和国11,671百万円、アメリカ合衆国11,442百万円、香港5,117百万円、大韓民国3,743百万円、台湾2,670百万円でした。出典は財務省貿易統計です。
「桶売り」とは何ですか?
国税庁の調査では「桶売り(未納税移出)」「桶買い(未納税移入)」として集計されている、製造者どうしの酒の取引です。中小企業1,188者のうち桶売りが407者、桶買いが379者でした。

出典

本記事は編集部が上記の情報源を確認して作成しました。引用は原典の原文のままです。表は原典の数値をそのまま転記し、抜き出した範囲・省略した行はキャプションに明記しています。「約57%」「9割を超える」「3分の1ほど」「約3.1倍」「半分を超える」といった割合は、原典の数値から編集部が計算したものです。輸出金額の推移は原典のグラフに表示されている数値を転記し、2024年の値が本文の記述と一致することを確認しています。免許場数・製成数量・輸出金額は単位も期間の区切りも異なるため、直接比較できるものではありません。規模や取引の有無は品質を示すものではないため、当サイトからは述べていません。