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ウイスキーとジンはいつ日本に来たのか|国税庁の資料で追えるところまで

ウイスキーもジンも、もともと日本の酒ではありません。では、いつどうやって入ってきたのか。

当サイトは一次資料で確かめる方針なので、まず国税庁の資料に何が書かれているかを調べました。結果は予想と違いました。確認できたことと、確認できなかったことを分けて書きます。

この記事の結論

  • 国税庁のテキストは、ウイスキーの「日本への伝来」を書いていません(世界の歴史だけ)
  • ジンには「歴史」の項自体がありません
  • 一方、ビール・ワイン・ブランデーには「我が国では」の記述があります。扱いが分かれています
  • 税の側には物証があります。輸入酒だけに貼られた「酒税証紙」です
  • 国税庁は「輸入洋酒用酒税証紙貼付ウイスキー」を史料として保存しています
  • よく語られる人名・年号は、今回確認した国税庁の資料には出てきませんでした

★国税庁のテキストは、ウイスキーの日本への伝来を書いていない

国税庁は、酒類販売管理研修のモデルテキストを公開しています。その第1章に「第3節 酒類の歴史、製造方法と保存管理上の注意等」があり、品目ごとに「(1) 歴史」の項が置かれています。

各品目の「歴史」の項に、日本への伝来や日本での生産開始が書かれているかを調べました。

品目 「歴史」の項 日本についての記述
ビールありあり
果実酒(ワイン)ありあり
ブランデーありあり
ウイスキーありなし
スピリッツ(ジン)項自体がないなし
国税庁「酒類販売管理研修モデルテキスト」第1章第3節の各品目の「歴史」の項を、編集部が本文で確認した(2026年8月15日確認)。「日本についての記述」は「我が国」「日本」の語が歴史の項に出てくるかで判定しました ※スマートフォンでは横にスクロールできます

ビール・ワイン・ブランデーには、はっきり書かれています。原文のまま引用します。

我が国でビールの醸造が始まったのは明治になってからです。

国税庁「酒類販売管理研修モデルテキスト」6 ビール (1)歴史(2026年8月15日確認)

我が国には戦国時代にワインが入ってきた記録がありますが、本格的に醸造が始まったのは明治以後で、消費が伸び始めたのは昭和 40 年代からです。

同 7 果実酒 (1)歴史(2026年8月15日確認)

我が国でも昭和 30 年代頃からブランデーの生産が本格的に行われるようになりました。

同 10 ブランデー (1)歴史(2026年8月15日確認)

ウイスキーの「歴史」の項には、これに当たる文がありません。

ウイスキーの歴史として書かれているのは、世界の話

ウイスキーの項に書かれているのは、アイルランド・スコットランド・アメリカの話です。日本は出てきません。

12 世紀末のアイルランドで、穀物を原料とした蒸留酒があったという記録があります。スコットランドでは 15 世紀末に麦芽を原料とした蒸留酒が造られていた記録もあります。この頃は、樽で貯蔵しない無色透明のお酒だったようです。

18 世紀にスコットランドがイングランドに併合されると、ウイスキーに対して過酷な課税が行われることとなりましたが、このとき密造者たちが、麦芽のみを使用したり、麦芽の乾燥にピート(泥炭)を使用したり、樫樽に長期貯蔵したりする現在のモルトウイスキーの製造法を行うようになったといわれています。

同 9 ウイスキー (1)歴史(2026年8月15日確認)

この項はこのあと、19世紀の連続式蒸留機(パテントスチル)の発明、グレーンウイスキーの登場、ブレンデッドウイスキーが主流になったこと、アメリカでバーボンが発展したことへと続いて終わります。日本に触れないまま「(2) 製造方法」に移ります。

ジンには「歴史」の項自体がない

スピリッツの項は、次の一文から始まります。

13 スピリッツ / ジン、ラム、ウオッカ等が有名です。

同 13 スピリッツ(2026年8月15日確認)

そのあとはジン・ラム・ウオッカ・テキーラそれぞれの製造方法だけが書かれています。「(1) 歴史」という項が置かれていません。

そもそも酒税法に「ジン」という品目がないことは、別記事で扱いました。歴史の扱いでも、ジンは他の品目と違う位置にあります。

酒税法に「ジン」という品目はありません|ジンは「スピリッツ」の中にあります

★では、税の側からは何が追えるか

「歴史」としては書かれていませんが、税の制度には、洋酒が日本にあったことの記録が残っています。国税庁「酒税制度等の沿革」から、関わりのある項目を抜き出します。

年次 事項(原文)
明治34年10月酒精及び酒精含有飲料税法の制定
明治34年12月麦酒税法の制定
昭和28年2月酒税法(現行法)の制定
昭和37年4月酒税法の大幅改正(酒類の種類分類の改正、一定の価格を超える高価格酒への従価税制度の採用、申告納税制度の採用)
平成元年4月酒税法等の大幅改正(級別制度の廃止、従価税制度の廃止、酒類の種類間の税率の見直し等、酒類の表示基準制度の創設)
平成9年10月
平成10年5月
酒税法の一部改正(WTO勧告に対応するためのしょうちゅう等蒸留酒に係る税率の見直し
平成18年5月酒税法等の一部改正(酒類の分類を4種類に簡素化、一部酒類の定義を改正)
国税庁「酒のしおり(令和7年7月)」付表 我が国における酒税制度等の沿革(概要)より、編集部が抜き出した(2026年8月15日確認)。原典は明治4年から令和までの一覧で、ここでは洋酒に関わる項目だけを掲載しています。原典にウイスキー・ジンという語は出てきません ※スマートフォンでは横にスクロールできます

目を引くのは平成9年から10年の「WTO勧告に対応するためのしょうちゅう等蒸留酒に係る税率の見直し」です。国内の焼酎と輸入されるウイスキーなどの間で税率に差があることが国際的に問題になり、それを直したという経緯が、税制の沿革に残っています。

いまはウイスキーもジンも焼酎とは別の税率欄にありますが、その形になるまでにこうした改正がありました。

★物証がある — 輸入酒だけに貼られた「酒税証紙」

もっとも直接的な記録が、税務大学校の租税史料にあります。「酒税証紙」という制度です。

酒税証紙制度は、昭和28年に酒税法で制定され、実際には輸入酒に限定して適用されていましたが、昭和49年にその適用も廃止されました。

酒税証紙は、輸入酒等の開栓部の封印として使用され、正規に課税された酒類かどうかを見極める一手段でした。

国税庁 税務大学校「租税史料特別展示 4.戦後の酒と酒税」(2026年8月15日確認)

輸入酒に限って、瓶の開栓部に証紙を貼っていたということです。様式の変遷まで記録されています。

酒税証紙は、昭和28年3月1日に様式が制定されました。この様式には「酒税証紙」と印刷されおり、その後、昭和31年4月1日に「LIQUOR TAX CERTIFICATE」と印刷された様式が新たに追加されました。

同(2026年8月15日確認)

そしてそのページに掲載されている史料の名前が、この記事の答えに最も近いものです。

輸入洋酒用酒税証紙貼付ウイスキー

同 掲載史料の名称(2026年8月15日確認)

証紙が貼られたウイスキーの現物を、国税庁が史料として保存しています。「歴史」の文章としては書かれていなくても、輸入洋酒としてのウイスキーが日本で課税されていたことは、物として残っているということです。

酒税証紙に起きたこと
昭和28年3月1日様式が制定される(「酒税証紙」と印刷)
昭和31年4月1日「LIQUOR TAX CERTIFICATE」と印刷された様式が追加される
昭和37年3月31日旧様式が廃止される(在庫分の使用は認められた)
昭和47年〜52年沖縄用の酒税証紙が別途定められる
昭和49年適用が廃止される
税務大学校「租税史料特別展示 4.戦後の酒と酒税」の記述を編集部が年表に整理した(2026年8月15日確認)。この表の形で原典に載っているわけではありません ※スマートフォンでは横にスクロールできます

★確認できなかったこと

ウイスキーやジンの伝来としてよく語られる話が、今回確認した国税庁の資料には見当たりませんでした。調べた資料を明示したうえで、確認できなかったことを書きます。

よく語られること 今回の資料での扱い
幕末に来航した船が幕府に酒を献上した話記載を確認できませんでした
大正期に技術者がスコットランドへ渡った話記載を確認できませんでした
日本初のウイスキー蒸溜所が建った年記載を確認できませんでした
国産ウイスキー第1号の発売年記載を確認できませんでした
ジンが日本に入ってきた時期記載を確認できませんでした
確認した資料は、国税庁「酒類販売管理研修モデルテキスト」第1章、同「酒のしおり(令和7年7月)」の酒税制度等の沿革、税務大学校の租税史料特別展示のページです。これらに記載がなかったという事実であり、事実の有無を判断したものではありません。関係する人名・社名の語も、これらの資料には出てきませんでした(2026年8月15日確認)

これらは各社の社史や業界団体の資料に記録されていると考えられますが、当サイトではまだ確認できていません。確認できたら、この記事に追記します。

なお、いま「ジャパニーズウイスキー」を名乗るための条件は、業界団体の自主基準として定められています。こちらは原文を確認できました。

「ジャパニーズウイスキー」と名乗れる条件|自主基準の全要件と、これが法律ではない理由

この記事の読み方

書いたことと、書かなかったこと

  • 国税庁の資料に書かれていることだけを書きました。広く知られた話でも、確認できないものは「確認できなかった」と記しています
  • 「記載がない」ことは「事実でない」という意味ではありません。資料の目的が違うためと考えられます
  • 販売管理研修のテキストは、販売業者向けの実務資料です。各国の酒の由来を説明する目的の文書ではありません
  • 年号や人名を知りたい場合は、各社の公式サイトや社史をご確認ください

※2026年8月15日時点で確認した内容です。資料は改訂されることがあります。最新の内容は国税庁のページでご確認ください。本記事は公表資料に何が書かれているかを扱ったもので、個別の商品や企業の評価ではありません。

よくある質問

ウイスキーはいつ日本に来たのですか?
今回確認した国税庁の資料には、伝来の時期についての記載が見当たりませんでした。確認できるのは、昭和28年から昭和49年まで輸入酒に酒税証紙が貼られていたこと、そして国税庁が「輸入洋酒用酒税証紙貼付ウイスキー」を史料として保存していることです。
なぜウイスキーだけ日本の話が書かれていないのですか?
理由は資料に書かれていないため分かりません。事実として、同じテキストの中でビール・果実酒・ブランデーには「我が国」の記述があり、ウイスキーにはありませんでした。
「酒税証紙」とは何ですか?
税務大学校の説明では「輸入酒等の開栓部の封印として使用され、正規に課税された酒類かどうかを見極める一手段」です。昭和28年に制定され、実際には輸入酒に限って適用され、昭和49年に廃止されました。
ジンの歴史はどこで分かりますか?
国税庁のテキストのスピリッツの項には「歴史」の項自体がなく、製造方法だけが書かれていました。今回確認した範囲では、ジンの歴史を扱った国税庁の資料は見当たりませんでした。
WTOの勧告とは何ですか?
国税庁の沿革に「WTO勧告に対応するためのしょうちゅう等蒸留酒に係る税率の見直し」として、平成9年10月と平成10年5月の改正が記録されています。沿革に載っているのはこの記述までで、勧告の内容の詳細は書かれていません。

出典

本記事は編集部が上記の情報源を確認して作成しました。引用は原文のままです。品目ごとの「歴史」の項の有無と日本についての記述の有無は、編集部がテキストの本文を確認して判定したもので、判定の基準は表のキャプションに記しています。酒税証紙の年表は、原典の記述を編集部が整理したもので、この表の形で原典に載っているわけではありません。「確認できなかったこと」に挙げた事項は、今回確認した3つの資料に記載がなかったという事実であり、事実の有無について当サイトが判断したものではありません。資料は改訂されることがあるため、最新の内容は国税庁のページでご確認ください。