日本酒度・酸度・アミノ酸度とは|国税庁の分析法に「甘口」「辛口」は一度も出てこない
「日本酒度+5だから辛口」という言い方をよく見ます。しかし日本酒度を定めている文書には、「辛口」という語が一度も出てきません。
この記事では、国税庁所定分析法(訓令)の「3 清酒」の原文を確認し、日本酒度・酸度・アミノ酸度がそれぞれ何を測った数字なのかを、計算式のまま整理します。
この記事の結論
- ★日本酒度は比重の数字です。式は「日本酒度=1443/S-1443」(Sは比重)
- 日本酒度0は、水と同じ比重。プラスは水より軽く、マイナスは水より重い
- ★所定分析法の清酒の項に「甘口」「辛口」「甘辛」の語は0回(本文を検索して確認)
- 酸度もアミノ酸度も、滴定に使った水酸化ナトリウム溶液の量です
- ★「甘辛度」の計算式を条件にしているGIが1つだけあります(佐賀)
- ★国が測る香気成分は4つ(酢酸エチル・イソアミルアルコール・酢酸イソアミル・カプロン酸エチル)
- これらはどれもラベルの必須記載事項ではありません
★日本酒度は「甘辛」ではなく比重の数字
国税庁所定分析法の清酒の項に、日本酒度の測り方が2通り書かれています。まず1つ目。原文のまま引用します。
3-3 比重(日本酒度)
国税庁所定分析法「3 清酒」3-3-1 試験操作(2026年8月12日確認)
A) 浮ひょう法
検体をシリンダーにとり、比重(日本酒度)浮ひょうを用いて15℃における示度を読み、検体の比重(日本酒度)とする。
見出しが「比重(日本酒度)」です。日本酒度は比重そのものを別の目盛りで読んだ数字、という位置づけになっています。
2つ目の方法には、換算の式が書かれています。
振動式密度計を用いて15℃における検体の密度を測定し、0.99997で除して比重(15/4℃)とし、次式により換算して検体の日本酒度とする。
同 3-3-2 試験操作(2026年8月12日確認)
日本酒度=1443/S-1443 (ただし、Sは比重(15/4℃))
この式が、日本酒度の正体です。糖分を測っているのでも、味を測っているのでもありません。15℃での比重を測り、それを1443という定数で目盛りに直しているだけです。
日本酒度と比重の対応
上の式を比重について解くと、S=1443/(1443+日本酒度) になります。この形は、所定分析法のエキス分の項にそのまま出てきます(後述)。数字を入れてみます。
| 日本酒度 | 比重(15/4℃) | 水(比重1.000000)と比べると |
|---|---|---|
| −20 | 1.014055 | 重い |
| −10 | 1.006978 | 重い |
| −5 | 1.003477 | 重い |
| 0 | 1.000000 | 水と同じ |
| +5 | 0.996547 | 軽い |
| +10 | 0.993118 | 軽い |
| +20 | 0.986329 | 軽い |
日本酒度0が「水と同じ比重」の位置です。ここを境に、プラスとマイナスが分かれています。
★分析法に「甘口」「辛口」は一度も出てこない
日本酒度が甘辛の話として語られることについて、文書を検索しました。
| 語 | 国税庁所定分析法「3 清酒」 | 清酒の製法品質表示基準 |
|---|---|---|
| 甘口 | 0回 | 0回 |
| 辛口 | 0回 | 0回 |
| 甘辛 | 0回 | 0回 |
| 日本酒度 | 出てくる | 0回 |
| 酸度 | 出てくる | 0回 |
読み取れることが2つあります。
① 測り方を定めた文書は、味の言葉を使っていません。比重をどう測り、どう換算するかだけが書かれています。
② ラベルの基準には、日本酒度も酸度も出てきません。つまりラベルの記載事項としては扱われていない数字です。書くかどうかは蔵の判断になります。
酸度は「滴定に使った水酸化ナトリウムの量」
酸度は「総酸(遊離酸)」という項で定義されています。
検体10mℓをとり、3-5-1の混合指示薬数滴を加え、N/10水酸化ナトリウム溶液で淡緑色を呈するまで滴定する。この滴定値をbmℓとし、次式によって検体の酸度として表示する。
国税庁所定分析法「3 清酒」3-5-2 試験操作 A)指示薬滴定法(2026年8月12日確認)
酸度=b×F(小数点以下2けたを四捨五入)
酸度とは、10mLの酒を中和するのに何mLの水酸化ナトリウム溶液が要ったか、という数字です。Fは使った試薬の力価で、濃度のずれを補正する係数として同じ文書に定義されています。
どの酸なのかは特定されていませんが、換算の式は用意されています。
コハク酸として算出する場合は次式による。
同(2026年8月12日確認)
コハク酸(g/100mℓ)=酸度×0.059
アミノ酸度も同じ滴定で測る
アミノ酸度は、酸度を測ったあとの検体をそのまま使って測れます。
検体10mℓをとり、フェノールフタレイン指示薬数滴を加えてN/10水酸化ナトリウム溶液で淡桃色を呈するまで中和する。これに中性ホルマリン溶液5mℓを加え、ここに遊離した酸をN/10水酸化ナトリウム溶液で再度淡桃色を呈するまで滴定する。この滴定値をamℓとし、次式によって検体のアミノ酸度として表示する。
国税庁所定分析法「3 清酒」3-6-2 試験操作 A)指示薬滴定法(2026年8月12日確認)
アミノ酸度=a×F(小数点以下2けたを四捨五入)
ホルマリンを加えると、それまで中和されていなかった酸が現れます。その分をもう一度滴定した量がアミノ酸度です。こちらにも換算式があります。
グリシンとして算出する場合は次式による。
同(2026年8月12日確認)
アミノ酸(g/100mℓ)=アミノ酸度×0.075
3つの数字を並べると、性格の違いがはっきりします。
| 指標 | 何を測っているか | 式 |
|---|---|---|
| 日本酒度 | 15℃での比重 | 日本酒度=1443/S-1443 |
| 酸度 | 中和に要した水酸化ナトリウム溶液の量 | 酸度=b×F |
| アミノ酸度 | ホルマリンを加えて再度滴定した量 | アミノ酸度=a×F |
エキス分は日本酒度から計算される
もうひとつ、日本酒度と直接つながっている数字があります。
次式によって検体のエキス分を算出する。
国税庁所定分析法「3 清酒」3-7 エキス分(2026年8月12日確認)
E=(S-A)×260+0.21
(中略)ただし、Eはエキス分(度)、Sは比重(15/4℃)で次式によって算出したもの。
S=1443/(1443+日本酒度)
Aはアルコール分(度)を第2表により比重(15/15℃)に換算したものである。
エキス分を出すのに、日本酒度から比重を逆算しています。日本酒度・比重・エキス分・アルコール分は、ひとつづきの計算でつながっている数字だということが、この式から分かります。
★「甘辛度」を条件にしているGIが1つだけある
ここまで見たとおり、国の分析法は甘辛について何も言いません。ところが清酒の地理的表示(GI)23産地のうち、1産地だけが「甘辛度」という計算式を生産基準に置いています。佐賀です。
ロ 化学的要素
地理的表示「佐賀」生産基準 1(1)ロ 化学的要素(2026年8月12日確認)
特定名称酒の製法品質の要件に該当しないものについては、次の算式により求められる甘辛度が0を超えること。
甘辛度=193593/(1443+日本酒度)-1.16×酸度-132.57
ここでも1443が出てきます。日本酒度から比重に戻す部分です。甘辛度は、日本酒度と酸度の2つから計算される数字だということになります。
式に数字を入れると、どういう組み合わせが「0を超える」のかが見えます。
| 酸度 \ 日本酒度 | −10 | −5 | −3 | 0 | +3 | +5 | +10 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1.0 | 1.37 | 0.90 | 0.71 | 0.43 | 0.15 | −0.03 | −0.49 |
| 1.2 | 1.13 | 0.66 | 0.48 | 0.20 | −0.08 | −0.27 | −0.73 |
| 1.4 | 0.90 | 0.43 | 0.25 | −0.03 | −0.31 | −0.50 | −0.96 |
| 1.6 | 0.67 | 0.20 | 0.01 | −0.27 | −0.54 | −0.73 | −1.19 |
| 1.8 | 0.44 | −0.03 | −0.22 | −0.50 | −0.78 | −0.96 | −1.42 |
表から分かるのは、日本酒度が同じでも、酸度が高いほど甘辛度は下がるということです。日本酒度だけでは決まりません。
なぜ酸度を引くのか。独立行政法人 酒類総合研究所のQ&Aに、味の感じ方としての説明があります。
清酒の甘辛については、清酒中の糖分と酸度のバランスによってほぼ説明できます。
酒類総合研究所「お酒のQ&A(清酒)」清酒の甘辛とは何ですか?(2026年8月12日確認)
清酒中の糖分が同じであれば、酸度が高くなると甘味を感じなくなり、逆に酸度が低くなると甘味を感じます。例えば吟醸酒は、分析値からは糖分が少ないので辛いお酒と考えられますが、官能的には、酸が少ないため、甘く感じるお酒もあります。
この他にも、清酒中に含まれる香り成分の影響や、口当たり等が影響します。
★「分析値からは辛いお酒と考えられますが、官能的には甘く感じるお酒もあります」——数字と感じ方がずれることが、国の研究機関の説明として書かれています。香り成分や口当たりも影響するとあり、日本酒度と酸度の2つでも説明しきれないことが示されています。
なお、この式を置いているのは23産地のうち佐賀だけでした。ほかの22産地の生産基準には「日本酒度」「酸度」という語自体が出てきません。GIの仕組みは別記事で扱っています。
★国が測る香気成分は4つ
所定分析法には香気成分の項もあります。標準溶液に使う物質として、4つが名指しされています。
香気成分標準溶液
国税庁所定分析法「3 清酒」3-18-1 試薬(2026年8月12日確認)
酢酸エチル、イソアミルアルコール、酢酸イソアミル及びカプロン酸エチルをそれぞれエチルアルコールに溶解後希釈して、検体のアルコール分±2度以内のエチルアルコール濃度の標準溶液系列を作る。
吟醸香の話で名前が挙がるカプロン酸エチルと酢酸イソアミルは、どちらもここに入っています。測定はガスクロマトグラフで行い、内部標準とのピーク面積比から検量線を使って量を求める、と手順まで書かれています。
ただし所定分析法は「どの香りが良い」とは書いていません。4つの物質の量を測る手順があるだけです。
買うときにどう見ればよいか
数字の読み方
- 日本酒度は比重の数字です。0が水と同じ、プラスが水より軽い側。糖分の量そのものを表した数字ではありません
- 日本酒度だけで甘辛は決まりません。佐賀の式でも、日本酒度と酸度の2つを使っています
- 日本酒度も酸度もラベルの必須記載事項ではありません。書かれていない商品があるのは普通のことです
- 数字は好みを決めるものではありません。当サイトからどの数値が良いとは述べません
※2026年8月12日時点で確認した内容です。所定分析法・生産基準は改正されることがあります。最新の内容は国税庁のページでご確認ください。本記事は測定方法の定義を扱ったもので、健康や体質への影響については述べていません。
よくある質問
日本酒度がプラスだと辛口ですか?
日本酒度0はどういう状態ですか?
酸度は何の酸を測っているのですか?
甘辛度という数値はどこで決まっているのですか?
吟醸香の成分は決まっているのですか?
ラベルに日本酒度が書いていないのはなぜですか?
出典
- 国税庁所定分析法(訓令)「3 清酒」(PDF)(比重(日本酒度)の測定と換算式、総酸(遊離酸)、アミノ酸、エキス分、香気成分。2026年8月12日確認)
- 国税庁「国税庁所定分析法(訓令)」目次(上記PDFの掲載ページ。2026年8月12日確認)
- 国税庁「地理的表示『佐賀』生産基準」(甘辛度の算式。2026年8月12日確認)
- 国税庁「清酒の製法品質表示基準」(日本酒度・酸度の語が出てこないことの確認。平成元年11月22日国税庁告示第8号。2026年8月12日確認)
- 国税庁「酒類の地理的表示一覧」(清酒23産地の生産基準へのリンク。2026年8月12日確認)
- 酒類総合研究所「お酒のQ&A(清酒)」(清酒の甘辛と糖分・酸度のバランス。2026年8月12日確認)
本記事は編集部が上記の情報源を確認して作成しました。引用は所定分析法および生産基準の原文のままで、(中略)は編集部による省略です。日本酒度と比重の対応表、甘辛度の計算表は、原文の式に編集部が数値を入れて計算したものであり、これらの表が原典に載っているわけではありません。語の出現回数は、編集部が本文を検索して数えたものです。「甘口」「辛口」については、今回確認した文書に記載がなかったという事実を書いており、あらゆる文書を網羅的に調べたものではありません。数値の大小は味の優劣を示すものではないため、当サイトからは述べていません。