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日本酒の温度と保存|「ぬる燗」は何度か、国税局の表で確かめる

当サイトでは以前、日本酒の季節の行事カレンダーで温度帯の呼び名を紹介しましたが、その記事では「呼び名に対応する温度の数値は見つからなかった」と書きました。

その後、国税局のページに数値の表があることを確認しました。この記事でその表を紹介し、あわせて料理との相性・保存方法についても原文で整理します。

この記事の結論

  • 燗は6段階(日向燗30℃/人肌燗35℃/ぬる燗40℃/上燗45℃/あつ燗50℃/飛びきり燗55℃以上)
  • 冷酒は3段階(雪冷え5℃/花冷え10℃/涼冷え15℃)
  • 「冷や」は常温のこと。冷蔵庫で冷やしたものは「冷酒」で別の言葉です
  • GIの生産基準には「どの料理と合うか」まで書かれています(松葉ガニ、山菜、貝類など名指し)
  • 保存は種類で変わります。吟醸酒は涼しい場所、「生酒」は冷蔵庫
  • 火入れは65℃前後(酒類総合研究所)

★温度の呼び名と数値

東京国税局のページに、2つの表が掲載されています。資料提供は日本酒造組合中央会です。原文のまま引用します。

燗の表現 温度
日向燗(ひなたかん)30℃近辺
人肌燗(ひとはだかん)35℃近辺
ぬる燗(ぬるかん)40℃近辺
上燗(じょうかん)45℃近辺
あつ燗(あつかん)50℃近辺
飛びきり燗(とびきりかん)55℃以上
東京国税局「日本酒(清酒)に関するもの」【日本酒の温度による呼び方】より引用(2026年8月12日確認)。同ページの表記は「資料提供:日本酒造組合中央会」 ※スマートフォンでは横にスクロールできます
冷酒の表現 温度
雪冷え(ゆきひえ)5℃
花冷え(はなひえ)10℃
涼冷え(すずひえ)15℃
同ページより引用(2026年8月12日確認) ※スマートフォンでは横にスクロールできます

燗は5℃刻み、冷酒は5℃刻みで3段階。規則的に並んでいます。同じページの前置きにはこう書かれています。

日本酒の飲用温度には固有の表現があり、日本人らしい繊細な気配りが感じられます。
日本酒はどの温度で飲んでもおいしく、味わいがあります。

東京国税局「日本酒(清酒)に関するもの」【日本酒の温度による呼び方】(2026年8月12日確認)

「どの温度で飲んでもおいしく」と書かれている点に注意してください。この表は呼び名と温度の対応を示したもので、どの温度が正しいという基準ではありません。

なお「冷や」は冷たい酒のことではありません。この違いは季節の行事の記事で扱っています。

★生産基準は「どの料理と合うか」まで書いている

地理的表示(GI)の生産基準は、その産地の酒がどんな料理と合うかを書いています。食材が名指しされている産地もあります。

清酒のGIの生産基準を全部開いて数えました。料理や食材に触れているのは14産地です。該当箇所を上から順に並べます。

産地 料理についての記述(原文の抜粋)
青森まろやかな口当たりですっきりとした後味が感じられる青森の清酒は、新鮮なヒラメやホタテの刺身のほか、年末年始の食卓に欠かせないナマコ酢など、青森県の特産品である魚介類との相性がとても良い。
岩手口当たりの柔らかな岩手の清酒は、和洋問わず様々な料理の食材の味を引き立てるため、食中酒に適している。特に、岩手県の郷土料理である「ひっつみ」など、各々の具材の持ち味が出汁となり、それら具材にすべての旨味が良くしみ込んだ、素材の味が引き立つ温かい料理との相性が非常に良い。
鳥取米の旨味とキレの良さが相まって飲み飽きしないことから、松葉ガニのような豊富な旨味を有する料理と相性が良く、海産物をはじめとする料理を邪魔することなく引き立たせ、口の中で完成(口中調味)させる食中酒である。
南会津塩蔵によって保存された山菜やキノコを用いた料理と一緒に楽しめる食中酒として、古くからこの地域の人々に好まれている。(中略)特産品である南郷トマトや会津田島アスパラガスを用いた煮びたしや天ぷらなど、心地よい酸味や苦味と油分が調和したコクのある料理とも非常に相性が良い。
喜多方口に含むと爽やかな甘みが広がりつつも軽快でキレの良い後味から、旬の野菜や山菜、特に東北地方で有数の生産量を誇る喜多方のアスパラガスが持つ甘みを引き立て、また、この地方で収穫されるそばの実等を使った山都そばをはじめとしたそば料理など、素材を生かしたシンプルな風味の料理と相性が良い。
利根沼田余韻で感じる苦みが春野菜を連想させ、この地域で収穫される蕗のとう及びタラの芽等の山菜並びに青物野菜が持つ苦みとの相性がとても良い。(中略)利根沼田の清酒由来のアミノ酸は、この地域の特産品である畜産物(豚肉、牛肉、鶏肉)を用いた料理の動物性タンパク質由来の旨味と相まって料理の味を引き立てる。
信濃大町信濃大町の清酒は、長野県大町市内及び近郊で多く採取できるタラの芽・コシアブラなどの山菜やクレソン等の、旨味を伴った苦味を持つ香味野菜などとの相性がとても良い。
静岡淡麗で穏やかな静岡の清酒は、新鮮なカツオ・マグロの刺身や生シラスといった、この地域の豊かな魚介類との相性がとても良い。
三重例えば魚介類等の脂分が少なくたんぱくな味わいの食材と合わせることで、食材の旨味が酒の旨味と相まってほどよく強調されるとともに、食材の臭みが爽やかな酸味により覆い隠されることから、特に貝類や甲殻類などと共に食中酒として楽しむことができる。
山梨このような柔らかで清らかな味わいの酒には塩気を感じさせる料理がマッチし、酒と食が綺麗に交わり、より味わい深く楽しめることができる。
佐賀このような佐賀の清酒は、料理とともに味わう食中酒として、比較的味の濃い料理と良く調和する。
福岡甘辛く旨味の多い福岡の料理に寄り添うように進化してきたため、料理の味を邪魔することなく、むしろ、食と一体となってバランスよく味わいを形成する。
長野(中略)濃厚な味わいの料理と合わせて飲むことで料理の旨味を深めることができる。(中略)それらを用いた濃い味付けの料理が多かったことから、合わせて飲むための酒として、穏やかな香りで濃厚な味わいの酒質を目指して酒造りが行われてきた。
京都京都の酒は、料理の邪魔をせずお互いを引き立て合う酒である。
清酒の地理的表示の生産基準(別紙1)を編集部が全部開き、「酒類の特性について」の項から料理・食材に触れる箇所を抜き出した(2026年9月4日確認)。(中略)は編集部による省略で、それ以外は原文ママ。並び順は編集部が季節の食材が名指しされているものを上にした ※スマートフォンでは横にスクロールできます

★★冬の食材を名指ししている産地があります。青森の「年末年始の食卓に欠かせないナマコ酢」、岩手の「素材の味が引き立つ温かい料理」、鳥取の「松葉ガニ」です。季節に触れているのは、生産基準の側です。当サイトが旬を判断したものではありません。

春の食材も出てきます。利根沼田は「余韻で感じる苦みが春野菜を連想させ」として蕗のとう・タラの芽を挙げ、信濃大町はタラの芽・コシアブラ・クレソンを挙げています。南会津は「塩蔵によって保存された山菜やキノコ」で、保存食との組み合わせです。

いっぽう食材を名指しせず、料理の傾向だけを書いている産地もあります。佐賀の「比較的味の濃い料理」、山梨の「塩気を感じさせる料理」、京都の「料理の邪魔をせずお互いを引き立て合う酒」がこれにあたります。

※★長野には注意が要ります。長野のGIは清酒と果実酒(ワイン)の両方を対象にしており、生産基準の中で別々に書かれています。山賊焼き・信州そば・信州黄金シャモ・信州サーモン・ジビエ・馬肉といった食材を名指ししているのはワインの側で、清酒の側は「濃い味付けの料理」までです。同じ産地名でも、酒の種類ごとに記述が違います。

ここに挙げた14産地以外の清酒のGI(山形・白山・灘五郷・はりま・新潟・滋賀・萩・伊丹、および全国を範囲とする「日本酒」)は、生産基準に料理・食材・食中酒・相性のいずれの語も見当たりませんでした。書かれていないことが、料理と合わないという意味ではありません。また、当サイトはこれらの組み合わせを試していません。上の記述はすべて生産基準からの引用です。

その土地の食べものに合わせて酒質ができてきた、という説明の仕方が共通しています。GIの仕組みは別記事で扱っています。

「燗にするとよい」と書かれている産地

温度についても、生産基準に書き込んでいる産地があります。

さらに、酸味があり様々な温度帯で表情が変わり、燗にすることで旨さが際立つ、いわゆる燗上がりする酒も多い。

地理的表示「鳥取」生産基準 1(1)酒類の特性について(2026年8月12日確認)

口に含むと、穏やかな甘味や旨味の膨らむ味わいの中に、しっかりとした酸味も感じることができ、冷酒・燗酒等、幅広い温度帯で楽しむことができる。

地理的表示「滋賀」生産基準 1(1)酒類の特性について(2026年8月12日確認)

鳥取の生産基準には、この地の酒造りを指導した人物の言葉として「酒は純米、燗ならなお良し」という一節も記録されています。

保存は種類によって違う

独立行政法人 酒類総合研究所のQ&Aに、保存方法の説明があります。まず全種類に共通する点です。

お酒は光の当たらない、なるべく涼しい場所に置くことが大切です。光(特に紫外線)、高温と酸素はお酒の大敵です。また、保管温度が低すぎても、酒質が変わることがあります。

酒類総合研究所「お酒のQ&A(お酒全般)」お酒の保存方法を教えて下さい。(2026年8月12日確認)

低すぎてもよくないと書かれている点が目を引きます。清酒については、種類ごとに分けて説明されています。

清酒には種類によって保存に適した条件が異なります。開栓後はしっかり栓をし、1か月ぐらいを目途に早めに消費することが勧められます。
一般に、普通酒、本醸造酒、純米酒(落ち着いた香のタイプ)は、光を避ければ、常温で保存できますが、高温になる場所は避けましょう。
一方、吟醸酒や純米吟醸酒は、香味がデリケートで変化しやすいので、より涼しい場所が望ましく、特に香の高いタイプは冷蔵庫に保存すると良いでしょう。
「生酒」や「活性清酒」には多くの場合「要冷蔵」の表示がありますので冷蔵庫で保存します。

同(2026年8月12日確認)
種類 保存の目安(原文の要点)
普通酒・本醸造酒・純米酒(落ち着いた香のタイプ)光を避ければ常温で保存できる。高温になる場所は避ける
吟醸酒・純米吟醸酒より涼しい場所が望ましい。特に香の高いタイプは冷蔵庫
生酒・活性清酒多くの場合「要冷蔵」の表示があるので冷蔵庫
開栓後(共通)しっかり栓をし、1か月ぐらいを目途に早めに消費する
酒類総合研究所「お酒のQ&A」の記述を編集部が整理した(2026年8月12日確認)。原文は上の引用のとおりで、この表の形で載っているわけではない ※スマートフォンでは横にスクロールできます

古い酒についても記述があります。

古くなったお酒が原因で、健康上の問題が起きることはありませんが、貯蔵中の酸素・温度・光の影響で、酒質が変化していることが考えられます。

同「古いお酒が出てきましたけど飲めますか?」(2026年8月12日確認)

火入れの温度は65℃前後

保存に関わる工程として、火入れの温度も同じQ&Aに書かれています。

火入は、お酒の温度を65℃前後まで上昇させることで、酵母による再発酵の防止,お酒を腐らせる乳酸菌の殺菌、麹や酵母由来の酵素の不活性化(働きを止める)等を目的とした製造工程の一つです。(中略)なお、清酒の火入の起源については、16世紀の室町時代と考えられています。

酒類総合研究所「お酒のQ&A(清酒)」火入とは何ですか?(2026年8月12日確認)

生酒が冷蔵を求められる理由も、同じQ&Aに書かれています。

生酒は、酵素が活性(酸化反応やでんぷんの分解等化学反応を行える)状態のため、酒質が変わりやすくなっています。

同「生酒とは何ですか?」(2026年8月12日確認)

火入れの回数と季節の呼び名との関係は「ひやおろし」と「秋あがり」の違いで、工程上の位置づけは日本酒の造り方で扱っています。

飲むときにどうすればよいか

温度と保存の目安

  • 「ぬる燗で」と言われたら40℃近辺です。呼び名と温度の対応は上の表のとおりです
  • どの温度が正しいという決まりはありません。引用した原文にも「どの温度で飲んでもおいしく」とあります
  • 「要冷蔵」と書かれていたら冷蔵庫へ。生酒・活性清酒には多くの場合この表示があります
  • 開栓後は1か月ぐらいが目安です。栓をしっかり閉めて、光と高温を避けてください

※2026年8月12日時点で確認した内容です。保存の条件は商品によって異なります。ラベルや販売店の表示を優先してください。当サイトから温度の良し悪しについて述べることはしません。飲酒は20歳になってから、適量をお楽しみください。

では、売り場では「燗にするとよい」とどれだけ書かれているのか。楽天市場の日本酒1,046件を数えたところ、商品名に「燗」があるのは13件(1.2%)でした。大吟醸系は0件です。

熱燗にする日本酒はどう選ぶか|「燗」と書かれた商品は1,046件中13件だった

よくある質問

「ぬる燗」は何度ですか?
東京国税局のページに掲載された表では40℃近辺です。日向燗30℃、人肌燗35℃、ぬる燗40℃、上燗45℃、あつ燗50℃、飛びきり燗55℃以上と、5℃刻みで並んでいます。
「花冷え」は何度ですか?
同じページの冷酒の表で10℃です。雪冷え5℃、花冷え10℃、涼冷え15℃の3段階が掲載されています。
日本酒は冷蔵庫に入れたほうがよいですか?
種類によります。酒類総合研究所の説明では、普通酒・本醸造酒・純米酒(落ち着いた香のタイプ)は光を避ければ常温で保存でき、吟醸酒や純米吟醸酒はより涼しい場所、生酒や活性清酒は冷蔵庫とされています。
開けたらどのくらいで飲みきればよいですか?
酒類総合研究所は「開栓後はしっかり栓をし、1か月ぐらいを目途に早めに消費することが勧められます」としています。酒造メーカー各社の目安は1週間ほどから1か月以内まで分かれます(→賞味期限の記事)。
酒器に決まりはありますか?
今回確認した文書(東京国税局の用語集、酒類総合研究所のQ&A、清酒のGI23産地の生産基準)には、酒器についての決まりは見当たりませんでした。記載がなかったという事実であり、あらゆる文書を網羅的に調べたものではありません。
どの料理と合わせればよいですか?
GIの生産基準には産地ごとに具体的な記述があります。たとえば鳥取は松葉ガニ、南会津は山菜やキノコ、三重は貝類や甲殻類が挙げられています。本文の表をご覧ください。

出典

本記事は編集部が上記の情報源を確認して作成しました。引用は各ページの原文のままで、(中略)は編集部による省略です。温度の表は東京国税局のページに掲載されたものをそのまま転記しました(同ページの表記は「資料提供:日本酒造組合中央会」)。保存方法の表と料理の表は、原文の記述をもとに編集部が整理したものです。酒器については、今回確認した文書に記載がなかったという事実を書いており、あらゆる文書を網羅的に調べたものではありません。温度や保存の条件は商品によって異なるため、ラベルや販売店の表示を優先してください。当サイトから温度の良し悪しについて述べることはしません。